できる人材に限られ、そこから委員の高齢化が避けられない事態も生みだしている。名古屋市の区政協力委員(その多くは町内会長を兼務)の年齢層別構成は、最高が60歳代で44%を占め、この世代以上の委員の割合は68%に達している。住民自治の充実のために改善すべき1つの問題がここにある。
4. コミュニティヘの総合・統合へ
行政の部署ごとの行政協力委員を住民の中に設置していく方式は、各行政事務の一元的な遂行のためにはまことに効率的な方法である。しかし、この方式によって地域社会にその業務についての自主的な住民による管理能力の強化蓄積がなされていっているかといえば、むしろ逆の印象を拭いえない。例えば、町内美化とか防犯、交通安全のための行政施策の推進のために協力委員(美化推進委員、防犯委員等)を設置し、活動推進のための週間・月間等を設定してPRを行い、ローテーションでモデル地区を決めて、看板を出したり、決起集会を行ったりし、そのための費用は行政が負担するといった事例は各地に見られるであろう。その目的について異論はないし、受け止め方によっては有効な事業とすることができるとしても、多くの場合その取り組みはキャンペーン型の行事で担当委員の枠を超えられず、また補助金の交付が終わるとともに、それ自体としては継続的な地域課題であっても旧態にもどってしまう事例が後を絶たない。それは課題が外在的に設定され、スケジュールをこなすだけのものとなっているからである。こうした行政施策と地域活動が延々と繰り返され、行政はともかく、地域住民の中では、活動への無関心と住民組織の軽視という悪影響が広がっている。その結果、行政がいわなければ地域の課題に取り組もうとせず、行政がいうから「取り組んでやる」とばかりに助成金を要求するという行政依存の体質をつくり出している。これでは地方分権を担う自律的な住民(組織)とはいいがたい。基礎自治体が分権に消極的といわれる背景には、こうして、行政自身によって作られこれに甘んじて地域自治の責任を放棄している住民の状況が見て取れる。
とはいえ、現在、高齢者福祉や防災、廃棄物処理他の環境問題等、地域の課題が多様化し、地域自身による課題選択と実施への要請が高まってきている。それが分権型行政システムヘの転換が提起される1つの背景である。どこに居住するかは個人の選択の結果であるが、その選択の枠はそれほど大きいものではないのが通常である。そうだとすれば、現在の生活の場で地域を発展させ、その担い手となることは住民にとって基本的に重要な生活充実のための課題である。1971年の自治省のコミュニティ政策から始まるコミュニティづくりの運動は、地域生活の変化という60年代以降の地域条件に加えて、行政システムの転換という90年代の変化により、本格的な推進の機が熟してきたといえる。行政のタテ割りによって住民の力を分散させるのでなく、住民のコミュニティへの総合・統合による自治的な地域組織と活動ができるようにする、行政の支援体制の転換が必要である。
地域住民には、地域の状況を正確に把握し、その課題にふさわしい住民の共同の力で、行政をも巻き込んで課題に対処することが求められている。これを地域共同管理の事業と呼ぶなら、行政と住民(組織)の共同の事業としての地域共同管理を担いうる主体の形成は、地方分権の推進にとって基本的に重要な課題となってきている。ここでの行政との関係は、それぞれの役割を認識した上で協力関係(パートナーシップ)となるはずであり、そのための条件と方策の検討が課題となろう。地方自治の従来の機関である行政と議会に加えて、コミュニティが恒常的な自治主体として立ち現れてきたのである。これらが地方分権の受け皿である。分権論はコミュニティ問題にまで深められなければならない。
プロフィール
氏名 中田実(なかたみのる)
名古屋大学情報文化学部社会システム情報学科教授
生年 1933年愛知県に生まれる
最終学歴 1960年3月 名古屋大学大学院文学研究科社会学専攻修士課程終了
職歴 1965年4月 愛知大学文学部社会学科 専任講師採用
1967年10月 同上 助教授 昇任
1969年4月 名古屋大学教養部社会学科 助教授採用
1979年3月 同上 教授 昇任
1993年10月 名古屋大学情報文化学部社会システム情報学科教授に配置替え
名古屋大学大学院人間情報学研究科社会情報学専攻(協力講座)教授
1973年〜 現在愛知県コミュニティ研究会委員
1980年〜 現在名古屋市コミュニティ研究会委員
専門領域 地域社会学、コミュニティ論、住民組織の国際比較研究